土用は「切り替え」の時間

生き方を深めるヒント

「土用」と「己巳の日」に見る“混ざり”の知恵

――変わり目に、自分を保つということ――

朝の空気に、秋の匂いが混じりはじめました。

(暦上では秋〜冬に突入しています)
木の葉が静かに色を落とし、風の向きが少し変わる。
この季節の移ろいの中で、ふと気持ちが揺れたり、体が重く感じることはありませんか。

それは怠けや不調ではなく、自然のリズムが切り替わっているサインです。
今は〈土用(どよう)〉――季節と季節の“間”にあたる時間。
そして今日は、その流れの中でめぐる〈己巳(つちのとみ)の日〉です。


土用とは、“止まる”ではなく“混ざる”時間

「土用」という言葉から、“動きを止めて休む時期”という印象を持つ方も多いかもしれません。
けれど本来の土用は、陰と陽、次の季節の気が交わる“混ざり”の期間です。

五行で「土」は、木・火・金・水――四季をつなぐ中央の性質を担います。
春(木)から夏(火)、夏から秋(金)、秋から冬(水)へ。
その境目に「土」が入り、互いの要素をほどき、混ぜ合わせ、新しい秩序をつくる。

だからこの時期、気分や体調が不安定になるのは自然なことです。
季節が混ざっているから、人も揺れる。
それは乱れではなく、変化の途中にいる証です。


己巳(つちのとみ)の日 ― 内に秩序をつくる日

そんな土用の中で迎える〈己巳の日〉。
古くから弁財天にゆかりがある日として「金運の日」とも言われますが、
その意味を少し深く見てみましょう。

十干の「己(つちのと)」は、陰の土
春の芽吹きを受け、夏の火を経て、秋の金の気が深まり、
次の冬へ渡る“手前”で自らをまとめようとする性質を持ちます。
外に広がるよりも、自分の内側に秩序を生む土です。

一方の「巳(み)」は、十二支の六番目。
胎の中で形が整い、次の段階へ生まれ変わる直前の象。
つまり「己巳の日」は、内側で形を整え、次の循環を迎える準備の日なのです。

お金を得る・増やすというよりも、
自分の中の“流れ”をきれいに通す日。
たとえば、

  • 財布の中を整える
  • 未払いを片づける
  • 今の使い方・受け取り方を見直す
    ――これらはすべて、己巳の象意に沿った「流れの整理」です。

混ざりの時期にこそ、“秩序”を意識する

土用は、混沌の中に秩序が生まれる時期。
外の動きが変わりやすいからこそ、内の基準を思い出すことが大切です。

「何が自分にとって心地よいのか」
「どんな状態が“整っている”と感じるのか」

それを思い出す時間を少しだけ持つと、
周囲の変化に引きずられず、自然なリズムに戻っていけます。

整えるとは、完璧に揃えることではなく、乱れの中に秩序を見出すこと
土用と己巳の日は、その感覚を取り戻すための節目です。


ゆらぎながら、整っていく

自然も人も、まっすぐには変わりません。
混ざり、揺れ、時に乱れながら、少しずつ新しい形を生み出していく。
それが“切り替え”の本質です。

止まるのでもなく、走り続けるのでもなく――。
混ざりながら、整っていく。
それが、季節とともに生きるということ。

今日の己巳の日が、
あなたの内側の秩序を静かに整える一日になりますように。


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